全 龍福(チョン・ヨンボク)

20歳で漆の世界に入る。1988年、東京・目黒雅叙園から5,000点の漆芸術作品の修復と作品づくりを依頼され来日。創作活動にふさわしい場所を求め、水と空気がきれいで良質な漆がとれる岩手県川井村と出逢い、一家5人とお弟子さん70人とともに移り住み、作品づくりを始める。現在、岩手県盛岡市を拠点に漆芸術家として、同館館長として活動中。

 代表作品

漆芸術の伝統を未来に伝え、漆の魅力と作品の数々を世界に発信!


 全 龍福著 『魂』 −パパ、なぜ日本にいるの?−

この本は、韓国で大ベストセラーである。その日本語版が今、出版された。著者の全龍福さんは、東京・目黒雅叙園の荒れ果てていた漆塗りの壁画や天井のすべてを修復し、現在の雅叙園を漆と螺鈿と金箔で、目もまばゆいこの世の極楽として再現させた人である。
この大偉業を成功させたのは、全さんの持って生まれた天才と人間技を超えた精進努力と熱烈な祖国愛と、その上に何者をも恐れない職人魂の信念と誇りの賜である。
この本を読みはじめると私は止められなかった。まるで推理小説を読むように面白いからである。
素朴な手記である筈なのに、無名の若い韓国の漆職人が、日本で最高の建設会社や、企業の社長や重役たちに、ただ一人で立ち向い、真剣で渡りあうような、仕事を取るまでの連日の会議の模様は、まさに手に汗握る緊張感がみなぎっている。その情況を中継しているテレビのように、ありありと描写する全さんの筆は実にいきいきしている。日本でも大ベストセラーになるだろう。
私は全さんと三度逢っている。はじめは私の住職をしている岩手県の天台寺へ訪ねてくれたのである。同じ岩手県の川井村に作業場を造っていたからである。それまで私は全さんに対して何の知識もなかった。全さんはたくましい偉丈夫で、上品で知的な紳士だった。
全身から礼儀正しさと人間に対するあたたかな親愛感を発散させていた。全さんは遠慮深く、自分の復興させた雅叙園を見てほしいと誘ってくれた。私はほどなく雅叙園を訪れ、その華麗さに驚嘆してしまった。全さんは人の姿を借りた鬼神ではないかと思った。しかし全さんはあくまで謙虚で慎ましい態度を保っている。
今も日本は韓国からこうした文化の技術と、それを守り抜く情熱と、祖国を愛する誇りを教えられているのである。

瀬戸内 寂聴

 経歴

1952年  韓国釜山生まれ
1980年  芸鱗漆研究所設立(釜山)
1985年  「世人工房」招待展(釜山)
1986年  現代美術大賞展大賞受賞(ソウル)
       韓国文化院個人展(東京)
1988年  目黒雅叙園漆研究所長就任(東京)
      東京・目黒雅叙園の漆工芸品約5千点を3年間にわたり復元修理、制作
      岩手県工芸展特賞受賞(盛岡)
1992年  目黒雅叙園美術館招待展(東京)
1993年  岩手県川井村内の中学校、高校で作品指導以後継続
1997年  芸術の殿堂KBS招待展(ソウル)
1998年  個人展(盛岡)
1999年  釜日ギャラリー個人展(釜山)
2000年  個人展(名古屋)
      目黒雅叙園リニューアルオープン10周年記念展示会(東京)
      大韓民国新知識人大統領勲章受賞(ソウル)
      ソウル漢陽大学校伝統美術研究所首席研究員
      岩手県川井村薬師塗漆芸館名誉館長
2001年  勲章受賞記念個人展(盛岡)
2002年  いわて・韓国友好フェア
      全龍福の世界+目黒雅叙園秘宝画展(盛岡)
2004年  岩山漆芸美術館開館 同館代表就任
2005年  APEC記念作品展示会(全作品展示)
       APEC in KOREAに作家として招待される
2007年  岩山漆芸美術館館長就任
現  在  岩山漆芸美術館館長
      全龍福漆芸研究所長
      岩手県盛岡市在住
      韓国、日本、ニュージーランドで作品指導を継続

座右の銘:『伝承・研磨・創造』
講演:岩手県小中学校長研究大会記念講演ほか多数
著書:「魂 パパ、なぜ日本にいるの?」(2001年韓国語版発行、2002年日本語版発行)