漆は「麗しい(美しい) 潤す 潤汁」という言葉が由来と言われています。
自らの身に受けた傷を癒すために出す樹液。漆という漢字には〈キヘン〉ではなく液体を表す〈サンズイ〉が使われていることからも、昔の人は「漆」を樹である前に液体を出すものとして特別に捉えていたのでしょう。
世界中に漆科の木はありますが、その中でも日本の生活と日本の漆の優れた成分とがあいまって、すばらしい文化が生まれました。
漆には三つの大きな特徴があります。
それは「美しさ」と「強さ」と「優しさ」です。
科学技術が発達した今日でも、このような特徴をそなえた物質=塗料を人間は発見、発明できていません。
漆はそんな不思議な魅力を持った物質なのです。
■漆は貴重な「樹液」
漆は、漆の木の樹液です。漆の木の皮の部分に刃物で傷をつけると、木はその部分を治そうと、樹脂を出します。これを掻(か)き取ったのが漆です。漆は、15年生の漆の木1本からわずか150グラムしか取れません。しかも、一度漆を取った木は枯れてしまいます。ですから、漆を取る人は伝統的な方法で大切に漆を掻き取ります。
■五千年以上もつ漆塗り工芸品
液体である漆は乾燥すると熱や酸に強く、腐食せず衝撃にも強い物質になります。このため食器や家具など、漆塗り製品は大事に扱えば五千年以上もつと言われています。このような漆の「強さ」に、色を加え、金や銀を蒔(ま)いたり七色の輝きを放つ貝殻で絵模様を描いたりする「美しさ」を加味したのが螺鈿(らでん)、蒔絵(まきえ)と呼ばれる日本の伝統技術です。
■体に優しい自然系塗料
漆は樹木から採取した、まったく自然な物質です。ですから、漆塗りの食器や家具を室内に置いても人間に悪い影響を与えません。また、近年、漆に抗ガン作用があることや、電磁波を吸収する効果があることなども発見され、実用に向けた研究が世界各地で進んでいます。
|